離婚のための手続
離婚のための手続には①協議離婚、②調停離婚、③裁判離婚があります。(審判離婚という制度もありますが、実務上ほとんど利用されていません。)
このうち②と③が家庭裁判所を利用した離婚手続きです。
協議離婚について
協議離婚は、夫婦間の話し合いで離婚を決め、役所に離婚届を提出する方法によって離婚する離婚手続です。離婚手続のなかでもっとも簡易な方法です。
離婚届を提出する際に子の親権をきちんと取り決めておく必要があります。
調停離婚について
調停離婚は、裁判所の調停委員を介して夫婦間の話し合いが進められます。調停委員が夫婦からそれぞれ個々に話を聞く形で話し合いが進められるので、原則として夫婦が顔を合わせることはありません。(ただし、近時は手続の進捗を確認する際に調停当事者の同席を求める運用をしていることがあります。また、調停終了時には原則として当事者同席のもと、調停条項を確認します。)
調停離婚はあくまで夫婦間の合意で離婚をする手続きですので、合意に至らない場合は離婚は成立しません。合意に至らない、調停不成立の場合、さらに離婚を求めるためには裁判離婚を検討しなくてはなりません。
基本的には弁護士に依頼することなく本人のみで進められる手続ではありますが、調停運営に問題のあるケースもあり、そういった事案、あるいは、複雑な法律問題含みの事案、当事者間の感情的対立が特に激しい事案、裁判離婚を視野に入れている事案などについては弁護士に依頼したほうが望ましいといえるでしょう。
裁判離婚について
裁判離婚は、一方当事者の訴えの提起によって、法律上の離婚原因の有無が争われます。法律上の離婚原因が存在すると裁判所が認めれば、夫婦の一方が離婚を拒絶していても離婚は成立します。(訴えを提起すれば必ず離婚が認められるわけではなく、法律上の離婚原因の存在が不可欠となります。)
離婚原因は民法770条第1項に規定されており、
● 配偶者に不貞な行為があったとき
● 配偶者から悪意で遺棄されたとき
● 配偶者の生死が3年以上明らかでないとき
● 配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがないとき
● 婚姻を継続し難い重大な事由があるとき
に限られています。
離婚訴訟を専門家以外が適切に遂行することは困難で、専門家である弁護士に依頼することが多いでしょう。
慰謝料
離婚による精神的損害について慰謝料を請求することができる場合があります。男女の別れには心の痛みを伴うもので、離婚する場合に常に慰謝料が認められるというわけではないことには注意が必要です。
慰謝料が認められるのは婚姻関係を破綻に至らしめた原因が一方当事者に存在する場合(わかりやすい例が、不貞行為やDV)に限られます。離婚原因が単なる性格の不一致では慰謝料が認められることは困難でしょう。
慰謝料の金額について、人の心の痛みをお金に換算することは容易ではなく、一概にその金額を確定することはできませんが、例えば、東京家庭裁判所における平成16年4月から平成17年8月までにおける慰謝料の認容額は300万円までが最も多いようです。(東京家庭裁判所における人事訴訟の審理の実情・判例タイムズ社)800万円程度の慰謝料が認められたケースがある一方で、慰謝料を100万円以下とするものも決して少なくありません。
法律的には慰謝料請求が可能であっても、相手方に全く資力がない場合にはその権利実現が困難となることもあります。
配偶者が不貞行為を行った場合で離婚にまで至らなくても、配偶者や不貞行為の相手方に慰謝料を請求することができます。もっとも、離婚した場合(婚姻関係が破綻した場合)に比べて慰謝料の金額は一般的に少額になります。
不貞行為が原因で離婚する場合の慰謝料
離婚慰謝料の発生原因となる不貞行為は、相手方配偶者と不貞行為の相手方の共同不法行為として構成されます。(なお、不貞行為により離婚しない場合も同様の法律構成となります。)
そのため、配偶者と不貞行為の相手方は連帯して慰謝料の支払い義務を負うことになります。(不真正連帯債務といいます。)
例えば、慰謝料(精神的損害)が200万円発生した場合、配偶者と不貞行為の相手方はともに200万円全額の支払い義務を負うことになります。もっとも、ここで気をつけなくてはいけないのは配偶者と不貞行為の相手方両者にそれぞれ200万円の支払いを請求(合計400万円の請求)できるわけではないことには注意が必要です。
配偶者が200万円全額を支払ってしまえば、不貞行為の相手方の支払いは消滅することになります。(借金における借り主と保証人のような関係をイメージするとわかりやすいと思います。)
離婚慰謝料の和解条項
離婚慰謝料の和解条項としては、以下のようなものが考えられます。(離婚を伴わない不貞行為を原因とする慰謝料請求の場合にも使えます。)
例:甲は、乙に対し、慰謝料として、金●●●万円の支払義務のあることを認め、これを平成●●年●月●日限り、持参又は送金して支払う。
家庭裁判所の調停では、あらかじめ振込先口座を調停条項で特定してしまうことが多いです。この場合、振込手数料の負担は原則として支払者です。
例:甲は、乙に対し、慰謝料として、金●●●万円の支払義務のあることを認め、これを平成●●年●月●日限り、甲名義の○○銀行××支店普通預金口座(口座番号1234567)に振り込む方法により支払う。ただし、振込手数料は乙の負担とする。
不貞行為の相手方にも連帯して責任を負わせる場合には、次のような和解条項となります。(甲1が配偶者、甲2が不貞行為の相手方)
例:甲1及び甲2は、乙に対し、慰謝料として、連帯して金●●●万円の支払い義務のあることを認め、これを平成●●年●月●日限り、持参又は送金して支払う。
財産分与
夫婦の共同生活で形成された財産は離婚の際にきちんと分ける必要があります。これを財産分与といいます。
財産分与の分与割合ですが、家庭裁判所では、現在、原則2分の1として運用されています。
夫婦が結婚前から所有していた財産や相続等によって取得した財産は、夫婦が共同で形成した財産とはいえませんから、財産分与の対象とはなりません。例えば、自宅建築にあたって、夫が土地を父から譲り受けた場合、当該土地については財産分与の対象ではありません。
財産分与は必ずしも離婚と当時に行わなければならないわけではなく、離婚してから2年間は財産分与を求めることができます。2年を経過してしまうと時効が成立してしまいます。