財産分与の算定基準
財産分与は、①財産の清算(清算的財産分与)、②離婚の扶養(扶養的財産分与)、③慰謝料(慰謝料的財産分与)の3つの要素があるといわれています。
もっとも、③慰謝料については離婚にあたって常に認められるわけではないですし、財産分与とは別に慰謝料の支払いを求めている場合はそちらでその可否について考慮されることになります。
②扶養的財産分与は①清算的財産分与、③慰謝料を好著してもなお離婚後の生活が困難である場合に生計を維持できる程度の額を具体的事情によって考慮するのが実務の趨勢といえます。(補充性)裁判例で扶養的財産分与が認められているのは妻が病気、高齢等で仕事ができない事情があるケースがほとんどです。
①清算的財産分与の算定は、特段の事情がない限り、2分の1で分割することが実務の主流の扱いです。
財産分与の基準時
財産分与の清算の基準時は原則として別居時となります。夫婦の経済的協力関係は別居の時に終了するものと考えられるからです。
したがって、別居時に有していた財産を基準に財産分与を検討することとなります。
そして、別居時に有していた財産の評価は裁判時の時価で行うこと合理的であることから、裁判時の時価をベースに財産分与を決定するのが基本となります。
親権
親権とは、未成年の子を監護教育するためにその父母に認められた権利及び義務のことをいいます。
夫婦間に未成年の子がいる場合、離婚する際に親権行使する者(親権者)を決める必要があります。「とりあえず離婚をしてしまって、離婚した後で親権を決めよう。」というわけにはいきません。離婚することそのものには争いがないのに、親権者についての合意ができないために、協議離婚や調停離婚ができないということもあります。
離婚調停が不成立になった場合には、その解決は離婚訴訟に委ねられ、親権も訴訟の中で判断されることになります。
夫婦のいずれが親権者として適切かは子の福祉の観点から判断されることになります。
その判断要素として、①これまでの子の養育状況(誰がどのように監護教育してきたか)、②今後の養育方針及び養育環境、③一方当事者が親権者となるのが適当な理由、及び、他方当事者が親権者となるのが不適当な理由、④(子が自分の意思を表明することが適切な年齢の場合)子の意向などがあります。
養育費
夫婦が離婚しても子との間で親子関係が失われるわけではなく、親は子の扶養義務を負います。非監護親は子の監護養育に必要な費用(養育費)を他方の親に支払わなければいけません。
養育費の金額は、養育費を支払う人の収入、養育費を受け取る人の収入、子の年齢や数の相関関係において決まります。その相場については養育費の算定表(裁判所のホームページ)がありますので、これを参考にしてください。(令和元年12月23日公表の新算定表です。)この算定表は家庭裁判所の調停でも利用されています。
養育費の一括払い
養育費の一括払いを希望される方が時々います。配偶者が将来どうなるかわからない(将来養育費を払ってもらえるかどうかわからない)ため、先に養育費を確保したいとの考えがあるようです。
このような懸念はわからないでもないのですが、家庭裁判所は原則として養育費の一括払いを認めていません。家庭裁判所の調停で養育費の一括払いを調停条項とするように求めても調停委員会から通常拒否されます。
将来、親や子の状況に応じて養育費の額は増減する可能性があり、あらかじめ一括払いといった方法でその適正額を決めることは困難であると考えられることや、一括払いを認めた場合に親権者がこれを使い切ってしまったとき、子の福祉に影響があると考えられること等が一括払いを否定する理由として考えられます。
養育費の増減額請求について
従来の協議、調停、又は審判で定められている内容が事情の変更によって実情に合致せず、不合理、不公平となっている場合には、家庭裁判所に養育費の増減額請求の申立てをすることができます。
事情の変更については、事後における、当事者の収入の変化、健康面や生活環境の変化のほか、扶養家族の変化、その他一切の事情を考慮して判断することになります。
気をつけなければいけないのは、上記事情があったときに養育費の額が自動的に増減するわけではありません。例えば、公正証書を作成していたり、家庭裁判所の調停で養育費を取り決めていたりした場合、「失業したから養育費の減額事由がある」と考えて勝手に一部養育費を減額して支払ったりしていると、最悪の場合には強制執行を受ける可能性があります。
養育費の増減事由があると考える場合には、家庭裁判所に調停を申し立てて、きちんと取り決めをしておく必要があります。
調停で当事者が合意できないときは審判に移行して、裁判所が養育費増減の可否とその額について判断することになります。
監護親が再婚した場合の養育費
例えば、監護親である母が再婚した場合、父の養育費の負担はどうなるのでしょうか。
この点、母の再婚相手が子と養子縁組をした場合、子に対する扶養義務は養親となった再婚相手が一次的に負うことになります。したがって、原則として実父は養育費の支払い義務を免れることになります。もっとも、この場合でも実父は子の扶養義務を完全に免れるわけではないので、例えば、養父に経済力がない場合等別途の考慮がなされる可能性があります。
これに対して、再婚相手が子と養子縁組をしていない場合、再婚相手は法的には子に対する扶養義務を負いません。したがって、再婚相手の経済力にかかわらず、実父の扶養義務に影響はありません。
このように、父母が再婚した場合にはケースに応じて養育費の負担を考える必要があります。