慰謝料
離婚による精神的損害について慰謝料を請求することができる場合があります。男女の別れには心の痛みを伴うもので、離婚する場合に常に慰謝料が認められるというわけではないことには注意が必要です。
慰謝料が認められるのは婚姻関係を破綻に至らしめた原因が一方当事者に存在する場合(わかりやすい例が、不貞行為やDV)に限られます。離婚原因が単なる性格の不一致では慰謝料が認められることは困難でしょう。
慰謝料の金額について、人の心の痛みをお金に換算することは容易ではなく、一概にその金額を確定することはできませんが、例えば、東京家庭裁判所における平成16年4月から平成17年8月までにおける慰謝料の認容額は300万円までが最も多いようです。(東京家庭裁判所における人事訴訟の審理の実情・判例タイムズ社)800万円程度の慰謝料が認められたケースがある一方で、慰謝料を100万円以下とするものも決して少なくありません。
法律的には慰謝料請求が可能であっても、相手方に全く資力がない場合にはその権利実現が困難となることもあります。
配偶者が不貞行為を行った場合で離婚にまで至らなくても、配偶者や不貞行為の相手方に慰謝料を請求することができます。もっとも、離婚した場合(婚姻関係が破綻した場合)に比べて慰謝料の金額は一般的に少額になります。
不貞行為が原因で離婚する場合の慰謝料
離婚慰謝料の発生原因となる不貞行為は、相手方配偶者と不貞行為の相手方の共同不法行為として構成されます。(なお、不貞行為により離婚しない場合も同様の法律構成となります。)
そのため、配偶者と不貞行為の相手方は連帯して慰謝料の支払い義務を負うことになります。(不真正連帯債務といいます。)
例えば、慰謝料(精神的損害)が200万円発生した場合、配偶者と不貞行為の相手方はともに200万円全額の支払い義務を負うことになります。もっとも、ここで気をつけなくてはいけないのは配偶者と不貞行為の相手方両者にそれぞれ200万円の支払いを請求(合計400万円の請求)できるわけではないことには注意が必要です。
配偶者が200万円全額を支払ってしまえば、不貞行為の相手方の支払いは消滅することになります。(借金における借り主と保証人のような関係をイメージするとわかりやすいと思います。)
離婚慰謝料の和解条項
離婚慰謝料の和解条項としては、以下のようなものが考えられます。(離婚を伴わない不貞行為を原因とする慰謝料請求の場合にも使えます。)
例:甲は、乙に対し、慰謝料として、金●●●万円の支払義務のあることを認め、これを平成●●年●月●日限り、持参又は送金して支払う。
家庭裁判所の調停では、あらかじめ振込先口座を調停条項で特定してしまうことが多いです。この場合、振込手数料の負担は原則として支払者です。
例:甲は、乙に対し、慰謝料として、金●●●万円の支払義務のあることを認め、これを平成●●年●月●日限り、甲名義の○○銀行××支店普通預金口座(口座番号1234567)に振り込む方法により支払う。ただし、振込手数料は乙の負担とする。
不貞行為の相手方にも連帯して責任を負わせる場合には、次のような和解条項となります。(甲1が配偶者、甲2が不貞行為の相手方)
例:甲1及び甲2は、乙に対し、慰謝料として、連帯して金●●●万円の支払い義務のあることを認め、これを平成●●年●月●日限り、持参又は送金して支払う。
財産分与
夫婦の共同生活で形成された財産は離婚の際にきちんと分ける必要があります。これを財産分与といいます。
財産分与の分与割合ですが、家庭裁判所では、現在、原則2分の1として運用されています。
夫婦が結婚前から所有していた財産や相続等によって取得した財産は、夫婦が共同で形成した財産とはいえませんから、財産分与の対象とはなりません。例えば、自宅建築にあたって、夫が土地を父から譲り受けた場合、当該土地については財産分与の対象ではありません。
財産分与は必ずしも離婚と当時に行わなければならないわけではなく、離婚してから2年間は財産分与を求めることができます。2年を経過してしまうと時効が成立してしまいます。
財産分与の算定基準
財産分与は、①財産の清算(清算的財産分与)、②離婚の扶養(扶養的財産分与)、③慰謝料(慰謝料的財産分与)の3つの要素があるといわれています。
もっとも、③慰謝料については離婚にあたって常に認められるわけではないですし、財産分与とは別に慰謝料の支払いを求めている場合はそちらでその可否について考慮されることになります。
②扶養的財産分与は①清算的財産分与、③慰謝料を好著してもなお離婚後の生活が困難である場合に生計を維持できる程度の額を具体的事情によって考慮するのが実務の趨勢といえます。(補充性)裁判例で扶養的財産分与が認められているのは妻が病気、高齢等で仕事ができない事情があるケースがほとんどです。
①清算的財産分与の算定は、特段の事情がない限り、2分の1で分割することが実務の主流の扱いです。
財産分与の基準時
財産分与の清算の基準時は原則として別居時となります。夫婦の経済的協力関係は別居の時に終了するものと考えられるからです。
したがって、別居時に有していた財産を基準に財産分与を検討することとなります。
そして、別居時に有していた財産の評価は裁判時の時価で行うこと合理的であることから、裁判時の時価をベースに財産分与を決定するのが基本となります。
親権
親権とは、未成年の子を監護教育するためにその父母に認められた権利及び義務のことをいいます。
夫婦間に未成年の子がいる場合、離婚する際に親権行使する者(親権者)を決める必要があります。「とりあえず離婚をしてしまって、離婚した後で親権を決めよう。」というわけにはいきません。離婚することそのものには争いがないのに、親権者についての合意ができないために、協議離婚や調停離婚ができないということもあります。
離婚調停が不成立になった場合には、その解決は離婚訴訟に委ねられ、親権も訴訟の中で判断されることになります。
夫婦のいずれが親権者として適切かは子の福祉の観点から判断されることになります。
その判断要素として、①これまでの子の養育状況(誰がどのように監護教育してきたか)、②今後の養育方針及び養育環境、③一方当事者が親権者となるのが適当な理由、及び、他方当事者が親権者となるのが不適当な理由、④(子が自分の意思を表明することが適切な年齢の場合)子の意向などがあります。
養育費
夫婦が離婚しても子との間で親子関係が失われるわけではなく、親は子の扶養義務を負います。非監護親は子の監護養育に必要な費用(養育費)を他方の親に支払わなければいけません。
養育費の金額は、養育費を支払う人の収入、養育費を受け取る人の収入、子の年齢や数の相関関係において決まります。その相場については養育費の算定表(裁判所のホームページ)がありますので、これを参考にしてください。(令和元年12月23日公表の新算定表です。)この算定表は家庭裁判所の調停でも利用されています。