高松総合法律事務所の法律ブログ

ワンセグ携帯の所持とNHK受信料の支払い

2016年9月8日  カテゴリ:ブログ, 雑感・その他

 市議の男性が、ワンセグ付きの携帯電話を所有する人はNHK受信料の契約を結ぶ義務があるかどうかを争った訴訟の判決(さいたま地判平成28年8月26日)で、裁判所は契約義務がないとの判断を示しました。(日本経済新聞)
 これに対して、総務大臣からはワンセグ携帯も受信契約締結義務の対象であるとの意見が出されているようです。(CNET Japan)

 契約締結義務の根拠となる放送法64条第1項は以下のとおりです。
【放送法64条第1項】
 協会の放送を受信することのできる受信設備を設置した者は、協会とその放送の受信についての契約をしなければならない。ただし、放送の受信を目的としない受信設備又はラジオ放送(音声その他の音響を送る放送であつて、テレビジョン放送及び多重放送に該当しないものをいう。第百二十六条第一項において同じ。)若しくは多重放送に限り受信することのできる受信設備のみを設置した者については、この限りでない。

 上記さいたま地判ではワンセグ携帯が同条項の「設置」にあたるかどうかが争点になったようですが、携帯電話の所持をもって「受信設備を設置」というのは文理上無理があり、法律解釈としては上記さいたま地判の判断が妥当であると私は考えます。

 少し脇道に逸れますが、放送法64条1項は、当事者間の合意によって成立すべきはずの契約について、一方当事者に契約締結義務を課すというちょっと珍しい内容の法律であるといえます。
 また、同条項では契約締結義務は課されているものの、契約の要素である受信料の具体的金額がどのように定められるかは記載がありません。契約の原則に立ち返り、契約の要素たる受信料の金額についてはあくまで当事者間の合意をもって具体的金額が決まり、当該金額の支払い義務が発生すると解するべきと考えられますが、このように解すると、視聴者めいめいが好き勝手な金額を主張し始めることになりかねず、NHKの経営は成り立たなくなるように思えます。かといって、同条項を根拠として、NHKが受信料の具体的金額を一方的に決めることができるというのは少なくとも法律上はやや無理があるように思います。

 NHKのサイトを見ても、受信料の具体的金額について、契約者(受信設備を設置した者)の合意が得られているとするのか、それとも相手方当事者の意思とは関係なく一方的に金額を決めているとするのか、NHKのスタンスははっきりと読み取れません。(あえてはっきりと書いてないのでしょうか?)

 上記さいたま地判からもわかるように、時代の進展によって法が予定していなかったような機器が登場して問題となり、また、人々の嗜好、行動様式も昔に比べて多種多様となっています。(NHKを見ない、あるいはテレビを見ないという人もいるでしょう。携帯についても通話とメール機能しか使っていないという人もいると思います。)NHKの経営がきちんと成り立ち、かつ、人々の不満が生じないような新しいシステムを模索すべき時代がきているのかもしれません。

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