ATMに対する動産執行(1)
今は取り扱わなくなりましたが、かつて、数はそれほど多くないものの、消費者金融に対する過払金請求も取り扱っていました。
某中小の消費者金融を相手にしたときのことです。
私はその業者に対して訴訟提起しました。(私は過払金返還請求事件は基本的に全件訴訟提起していました。)その業者はまともに応訴せず、判決の言い渡しがありました。
判決が出たにもかかわらず、業者は経営が苦しいといい、少額の支払いしか提示してきません。債務者が生活が苦しいと言ってもなりふり構わず督促していたのにひどい話です。
そこで、私は業者の店舗に対する動産執行をすることを検討しました。店舗に併設されているATMには現金があるだろうと考えたのです。
私は執行官の動産執行に同行しました。
執行官が店舗に入り、しばらくして出てきて言うには「金庫の中もみたのですが現金はありませんでした。」とのことでした。
貸付を行っている貸金業者の店舗に全く現金がないというもおかしな話です。おそらく業者は動産執行が入るのを見越して現金を隠していたのでしょう。
私もそれは予想していたので、「ではATMの執行をお願いします。」と執行官に伝えました。
業者従業員は「ATMは開けることができません。」と言います。では、ATM内の金がなくなったら補充はどうするのかと思いましたが、要するに金を取られるのが嫌で開ける気がないのでしょう。
任意に開けないのであれば破壊してでも開けるべきであると私が主張すると、執行官は警報装置が作動して警察が来るとなんたらかんたらと言っています。
執行官が連れてきた鍵業者がATMを見て、開けるのは無理であると言います。
私は破壊してでも開けるべきであると再度強く主張したところ、執行官は私の主張を無視し、執行不能で手続を終わらせてしまいました。どうやら、私が主張するような手法は民事執行法123条2項の「必要な処分」にはあたらないとするのが執行官の解釈のようです。
((2)へ続く)