高松総合法律事務所の法律ブログ

民法全面改正の必要性

2013年9月1日  カテゴリ:雑感・その他

 法制審議会(法相の諮問機関)の民法部会は9月から、契約に関するルールなどを定めた条文の改正に向け、本格検討に着手するとのことで、法務省は2015年の通常国会に民法改正案を提出する方針だそうです。(時事通信)

 弁護士会でも改正案についての意見とりまとめ等を行っているところですが、実は改正そのものの必要性に疑問を持っている弁護士も少なからず存在します。
 時事通信の記事に対するコメント欄をみると「時代に合わない法律、新しい動きに対応できてない法律は早く変えるべきだ」「改正は時代背景を考えれば当たり前」等といった意見があります。現行民法が明治時代にできた法律であることから、事情を知らない方は民法のことを「時代に合わない古い法律」というイメージを持って見ているのかも知れません。
 また、民法改正を主導している一部の学者もいろいろと理由を付けて民法改正の必要性を説いています。
 しかしながら、民法の全面改正を必要とする立法事実が存在するのかというとおそらく存在しません。現行民法は時代にそぐわない古い法律というのはまったくの誤解で、百年以上にもわたる時代の変化にも耐えうる非常に優れた法律です。
 確かに、個別の条文で、国民の意識の変化等に伴い改正を是とすべきものが存在することは否定しませんが、それは個別に条文を改正すれば足りることです。改正の必要性に疑問符がつく部分を含めて法律を全面的に改正することは予期しない混乱を巻き起こす危険もあり慎重であるべきでしょう。

 時事通信の記事では(民法改正は)消費者の権利を重視する方向で検討が進められているとしており、消費者の権利保護そのものについては私も反対はしませんが、これを一般法に取り込む必要性は全くなく、特別法の制定、あるいは改正で十分対応できるでしょう。
 また、記事では一般の人が条文を読んでも分かるようにする案が有力としています。確かに、一般の方が法律を読んですべて理解できることが理想なのでしょうが、民法改正によってそうはならないと私は思っています。現行民法は条文数が1044条ありますが、改正民法は条文数がこれの2倍、3倍になるとも言われており、法律そのものはより複雑になりそうですし、また、条文数が増えても、法律解釈がすべて不要になることは考えられず、おそらくこの点は専門家に委ねざるを得ないでしょう。

 民法改正の背景にはこれに関与する一部学者の功名心があると指摘する声もあるようです。つまり民法の全面改正が成立すれば、これに関与した学者は我妻栄といった大学者と肩を並べる存在になり得、それを狙ったものではないかというわけです。
 その指摘の妥当性はともかくとして、必要性の乏しい法律改正の動きについて注視していく必要があることだけは言うまでもなさそうです。

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