債務整理と任意売却上の留意点
借金の整理方法の一つに任意売却,すなわち,不動産を売却してその売却代金を債務に充当する方法があります。
この任意売却に関するウェブサイトは乱立状態で,オーソドックスな不動産業者のサイトのみならず,「○○センター」や「○○会」などあたかも公的機関であるかのように称して顧客を誘因するもの(実際には公的機関でもなんでもなく,一不動産業者です。)や,(手段を選ばない仲介手数料目当てと思われますが,)あからさまな嘘,間違いが記載されているサイトも少なくないので注意が必要です。
ここでは,債務整理の方法として任意売却を検討されている方が誤った判断をしないよう何点か留意点を挙げておきたいと思います。
1 不動産を売っても残債が残る場合には任意売却では借金問題は完結しない
債務額が売却代金から不動産業者に支払う仲介手数料,登記費用,印紙代等を控除した金額を下回る場合,任意売却で借金問題は解決します。
しかし,そうではない場合は残債をどのように処理するかの問題(多くの場合法的整理が必要になります。)を避けて通れず,任意売却のみで借金問題が解決するわけではありません。
2 破産前に不動産を処理するのは原則許されない
任意売却に関するサイトのなかには,「破産前に不動産を売却してしまえば費用や時間のかからない同時廃止の手続きで破産可能」といったことが記載されているものがありますが,とんでもない誤りです。
裁判所は不動産の処理は原則的に破産管財人が処理することを建前としており,破産開始決定前に破産者が不動産を売却した場合には,同時廃止どころか,破産管財人が否認権を行使して不動産売買の効力を失わせたり,破産者が個人の場合には免責不許可となったりするおそれがあります。
3 あくまで法的整理(破産,再生)の枠組みで考える
上記1に関連しますが,法的整理が必要なのであれば,売れるか売れないか任意売却のことで思い悩むのではなく,法的整理の枠組みで今後のことを考えていったほうが楽です。
不動産が売れようと売れまいと法的整理手続が完了すれば,借金の問題は解決します。
4 高い売却価格をちらつかせる任売業者には注意
高い価格で不動産を売却できれば借金が減ることから,高い売却価格をちらつかせる業者に目が行きそうです。しかし,これは任売業者が専任媒介契約締結目当てで根拠のない売却価格を述べていることがあります。こういった業者とは関わり合いを持たないほうが無難です。