高松総合法律事務所の法律ブログ

不合理な判決

2017年5月30日  カテゴリ:交通事故, ブログ

 訴訟当事者は裁判を通じて裁判所から適切な結果が示されることを期待していることと思います。ところが「これはさすがにないんじゃないか。」と思わせるような不合理な内容の判決を目にすることが時々あります。(交通事故の裁判に限らずですが。)
当事務所では交通事故に関する判例が掲載された自保ジャーナル(株式会社自動車保険ジャーナル発行)を定期購読していますが、その一例となるような判決を目にしたのでご紹介したいと思います。

 横浜地方裁判所相模原支部平成27年11月24日判決(自保ジャーナルNo.1990)

 パート兼家事従事者が横断歩道歩行中の事故。被害者は脳挫傷、頭蓋骨骨折等の傷害を負い、高次脳機能障害、身体性機能障害から自賠責2級1号後遺障害を残した。自動車運転者は被害者が事故によって傷害を負ったことを否認している。
 争いのない事実として、
・被害者が横断歩道を歩行していた。
・被害者が道路に倒れた。
・加害車両は急ブレーキをかけた。
・事故当日に加害者立会のもと警察が作成した実況見分報告書には、加害車両運転者がブレーキをかけた地点、被害者と衝突した地点、車両停止地点等の記載がある。
・また、同日、加害車両ボンネット上の払拭痕等の確認が行われ図面が作成されている。

 争いのない事実だけでも事故の発生そのものを否定するのは無理なのではないかと思えますが、裁判所は以下のように述べて加害車両の運行によって被害者が負傷したことを否定し、被害者の請求を棄却します。

原告(被害者)の進行方向や被告(加害者)車両の接近態様に対して原告の受傷内容が後頭部の外傷のみであることからは、被告の走行に起因する具体的な転倒態様を想定することも困難であり、証拠によって、原告の転倒と被告走行車両の走行との間に相当因果関係を認めることはできない。

 しかしながら、被害者が認知症、その他の脳疾患でもあったのではない限り、加害車両との接触もないのに、道路上でいきなり頭部にダメージを負うような形で転倒することは考えられません。被害者は68歳のパート従事者で仕事をしており、こういった疾患があったわけではなく、裁判所の認定は「これはさすがにないんじゃないか。」と言わざるを得ないようなものです。

 案の定と言いますか、この判決に対しては被害者から控訴されています。高等裁判所では被害者は加害車両の運行によって負傷したとの認定がなされ、一審の判決は取り消されています。(東京高等裁判所平成28年11月17日判決)

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