インターネット法律相談の落とし穴(1)
何かトラブルがあったときに、法律関係の情報収集をインターネットで行う方も少なくないのではないかと思います。
そして、今はインターネット上で単なる情報収集のみならず、法律相談もできるサイトもあるようです。
このようなインターネットでの法律相談は法律事務所に赴くこともなく気軽に相談できる点でメリットがある反面、デメリットもよく認識しておく必要があろうかと思います。
このデメリットとして、例えば、インターネットは衆人に公開された空間ですから、相談者が法律相談をしようとした場合、その質問事項、懸念事項や希望事項、これに対する弁護士の回答などが不特定多数人に公開されてしまい、場合によっては紛争の相手方を含む関係者も見ているということがあり得ます。
これは手札をオープンにしながらトランプゲームをするようなもので、決して適切なこととは言えません。
私が過去に確認したものには、相談者が法律相談がオープンになることを認識せずに複数の質問を繰り返した後、自分の質問がすべて公開されていることに気がついて、(関係者から指摘を受けた?)あわてて削除を希望するも叶わないといったものがありました。
相談者としてはこのようなことを避けるため、事案をデフォルメして質問することによって、自己の特定を避けようと考えるかも知れません。しかし、事実が変われば法律関係も変わりますから、正確な法律相談は望めなくなってしまうでしょう。
また、一見すると相談者にとってメリットである匿名の相談が可能という点にも実は問題があります。
弁護士は案件の相談や受任の際には利益相反(紛争の相手方の代理人等をしていないか)をチェックしますが、そのチェックの対象から匿名相談者は外れてしまいます。そのためインターネットで相談に乗ってくれた弁護士が後で紛争の相手方の代理人として活動していたなどというケースも実際にあるようです。(これは弁護士にとっても大きな問題があります。)
さらに、確かにインターネットは便利なコミュニケーションツールではありますが、その充実度においてはフェイストゥーフェイスのコミュニケーションにかないません。弁護士から相談者に繰り返し質問したり、相談者が持参した資料を確認したりといった、面談での法律相談であれば当然できることがインターネット法律相談では十分にできないことから、インターネット法律相談はどうしても不正確性を内在したものにならざるを得ません。
インターネット上の情報は玉石混淆で鵜呑みにすることは注意が必要ですが、残念ながらインターネット法律相談も注意を払わなければいけない点については同様であると思います。
そして、相談の不正確性に関して言うと、法律相談に応じる一部の弁護士側の姿勢もその原因になっていると感じますが、この点については改めて述べることとします。