中間利息5%から3%(変動制)へ
法制審議会が,交通事故などの損害賠償における逸失利益等の損害についての現価計算を行う際の割引率を5%から3%かつ変動制にすることを認めたとの報道がありました。(毎日新聞)
少し補足すると,例えば,交通事故の被害者が,将来発生する損害(逸失利益や将来介護費等がこれに含まれます。)について前倒しで金銭を受け取る場合に利息相当分を控除しないとその分について得をしてしまいます。
例えば,利率の5%の利息が発生するものとすると,1年後に得られるはずの100万円を,今そのまま100万円受領してしまうと利息分5万円得をします。
100万円×1.05=105万円
そこで,将来発生する損害を現在支払う場合には利息分をあらかじめ控除する必要があります。(「中間利息を控除する」などといいます。)1年後に受け取る100万円を今受領するのであれば100万円ではなくて95万2381円を受け取る必要があります。
100万円÷1.05=95万2381円(小数点以下四捨五入)
中間利息の利率が高ければ高いほど得られる交通事故の被害者が受け取る賠償金が少なくなるのですが,裁判実務ではこの利率を5%(複利)で計算してきました。
もっとも,現在の社会で年5%(しかも複利)といった高い利率で運用益を得られるかどうかは極めて疑問であり,過去には一部の弁護士が積極的にこの利率を争い,下級審では割引率を2%や3%として認めるものも存在しました。
しかしながら,これらの判断は最高裁でも採用されるということにならず,最高裁平成17年6月14日判決は5%の利率が相当であると結論付けました。(ただし,単利か複利かは明言していません。相変わらず実務は複利計算ですが,この最高裁判決後に単利(被害者に有利)を相当とした高裁判決もあります。)
ただ,最高裁がどのように判断しようと,現在の経済情勢,預金の利率等からして年5%の利率で中間利息を控除することが不合理なのは明白で,今回の利率見直しは適正な損害金の算定へ向けた大きな一歩と評価できるでしょう。(もっとも,3%が本当に妥当かどうかは議論の余地があると思います。)
なお,これは(一部学者主導による)民法の債権法大改正の枠内での話のようです。中間利息控除の利率見直しそのものについては私は大賛成ですが,債権法大改正をすべきかどうかという点については拙速に事を進めるのではなく慎重に検討する必要があると思います。