高松総合法律事務所の法律ブログ

訴訟提起前に人傷保険金請求を先行させるべきか否か

2014年8月17日  カテゴリ:交通事故

 このブログは一般の方に参考にしてもらおうと書き始めたのですが、同業者も見ていることが割と多いみたいで、全然面識のない弁護士から連絡をいただいたり、友人の弁護士から「もっと更新するように」と苦情(?)を言われたりすることがあります。
 自分がこれまでに書いた記事を振り返って、一般の方向けではないと感じられる記事も目立つなあと思いつつ、今回の記事も一般の方向けというより同業者向けの内容となってしまうかも知れません。

 交通事故事件において、被害者が人身傷害補償保険(人傷保険)に加入している場合、訴訟提起前に人傷保険金請求を先行させるべきかどうかという点について、訴訟先行事案において人傷基準差額説を採用した大阪高判平成24年6月7日(未確定)を踏まえ、人傷保険金請求を先行させるべきと考える弁護士もいるようですが、私の考えは少し違います。

 少し前の調査になりますが、平成23年に北海道の適格消費者団体が損保各社に訴訟先行、人傷保険金先行で取扱いを変えるのかどうかアンケートを取ったところ、多くの損保では訴訟先行か否かにかかわらず訴訟基準差額説を採用していました。(そうではない損保も今後約款変更を検討するとしたものがあります。)(消費者支援ネット北海道のHP

 私も現在の全損保の約款を把握しているわけではありませんが、上記の点を踏まえる限り、現在多くの損保では訴訟先行か否かで人傷保険金と損害賠償金の受取合計額は変わらないということになりそうです。

 そうすると、今度は別の考慮を働かせる必要があります。人傷保険金は遅延損害金ではなく元本に充当されることになるため、(最判平成24年2月20日)訴訟提起に先立って人傷保険金を受領してしまうと、訴訟提起を先行した場合に比べて、被害者のトータルの受取金額が少なくなってしまい、特に、高額賠償事案だとその金額は無視できないような多額になってしまう可能性もあります。

 したがって、現時点で弁護士の取るべき方法としては、当該損保の適用約款、取扱いに注意を払いつつ、訴訟先行かどうかにかかわらず訴訟基準差額説が適用されるのであれば、人傷保険金請求に先立って訴訟提起を行うことを基本とするのが妥当であると考えます。

 いずれにしても依頼者の正当な利益を害さないように注意を払いたいものです。

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