借金に関する問題
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昔の借金の請求がきた場合

 「かなり昔に借りた古い貸金債権の請求を受けている」「請求書のようなものは来ていたが無視していた」「差し押さえを受けた」といった相談が多くなりました。特に、近年は貸金業者や債権を譲り受けたサービサー(債権回収会社)が古い債権の回収を積極的に行っているような印象を覚えます。
 昔に借りた古い貸金債権は消滅時効が成立していること(支払わなくてよい)が多いのですが、対応を誤ると不利益を被ることがあるので注意が必要です。
 以下、何点か注意事項を指摘しておきたいと思います。

 

時効完成の期間

 債権者が会社の場合は5年、個人の場合は10年で時効が完成します。(消費者貸付の場合)

 

弁済で時効が中断、時効援用不可

 弁済を行うと時効が中断します。たとえば、アイフルの貸付につき4年が経過したものの(あと1年で時効完成となる。)その時点で弁済を行うと時効完成のスタートがゼロからになります。(あと5年で時効完成となる。)

 また、いったん時効が成立した場合に弁済を行うと、原則として時効の援用を行うことができなくなります。(支払わなくてよいということが言えない)
 時効が成立している古い債権について自宅等に取り立てに来て少額を支払わせて消滅時効援用阻止を図る業者がいるので注意が必要です。(もっとも、支払ってしまった場合もなんとかなる可能性があります。)

 

裁判所からの通知は無視しない

 昔の債権は通知等が来てもそのまま放置している方が大半です。ただし、裁判所からの通知(支払督促、訴訟提起の通知。簡易裁判所からであることが多い。)はそのまま放置していると後々大きな不利益を被る可能性が高いです。絶対に放置しないようにしましょう。(もっとも、放置していた場合もなんとかなる可能性はありますが。)

 

弁護士に早めに相談

 業者からの通知、連絡、裁判所からの通知のいずれの場合にも弁護士に早めに相談したほうがよいでしょう。早めの対策がリスク回避に有効です。

 

過払金返還請求について

 過払金返還請求とは債務者が貸金業者に利息制限法の上限を超えて支払ったお金を返還してもらうことを言います。そもそも利息は利息制限法で利率の上限が定められており、
10万円未満・・・年20%まで
10万円以上100万円未満・・・年18%
100万円以上・・・年15%
となっています。
 にもかかわらず、かつて、消費者金融や商工ローンをはじめとする貸金業者は利息制限法の利率以上の金利による貸付を行ってきました。ところが、詳細は端折りますが、最高裁判所で利息制限法以上の利率による利息の受け取りが無効であると判断され、債務者は払いすぎたお金の返還をできることになったのです。

 過払金が発生するかどうかは、ケースバイケースであると言わざるを得ませんが、利息制限法以上の利息で貸し借りを7年以上繰り返していた方は過払金が発生している可能性がかなり高いでしょう。取引期間の長さや取引金額によっては数百万の過払金が見込めるケースもあります。
 過払金の消滅時効は取引終了時から10年です。

債務整理の手続

 債務を整理するための手続として、①任意整理、②自己破産、③個人再生があります。
 このうち②、③が法的整理のカテゴリーに含まれ、裁判所を利用して債務を整理する方法です。

自己破産について

 自己破産とは借金の総額が多額になるなどして借金の支払いができなくなった場合に、裁判所に対して自ら破産の申立をすることを言います。
 自己破産により免責許可決定が確定すると借金の支払いをする必要がなくなります。

 ただし、マイホームや高価品などの一定の財産は手放すことを余儀なくされます。(すべての財産を手放さなければならないわけではありません。)また、特定の債権者だけを特別扱いすることは許されません。例えば、友達の借金だけは返したいなどということは通用しません。

 破産手続きには破産管財事件(「管財事件」ともいいます。)と同時廃止事件(「同廃事件」ともいいます。)があります。管財事件の場合、裁判所から破産管財人が選任されて破産手続きを進めていくことになります。管財事件の場合には裁判所に一定の予納金を支払う必要があります。事業者や会社代表者、一定額以上の財産を有する者、免責許可に問題があると考えられる者等は原則として管財事件として処理されることとなります。

個人再生について

 個人再生は借金の支払いが困難になった場合に、借金を減額したうえで一定期間内(3年~5年)に借金を弁済していく計画(再生計画)をたて、再生計画どおりに借金を返済していく制度です。再生計画どおりに借金の支払いを終えれば、減額分の借金は一切支払う必要がなくなります。ただ、個人再生は自己破産と異なり、借金の返済を予定しているので、一定の収入があることが必要となります。

 個人再生の最大のメリットは住宅資金特別条項を設定することによって、マイホームを手放すことなく借金の整理が可能となる点です。(マイホームに住宅ローン以外の担保権が設定されている場合等一定の場合には不可能ですから注意してください。)

 住宅ローン債権者からリスケジュールを断られた場合、期限の利益を喪失した場合、保証会社による代位弁済が完了した場合、住宅ローン債権者から競売を申し立てられた場合にも住宅ローンの支払予定を新たに組み替える等によってマイホームを守ることができる余地があります。(ただし、保証会社による代位弁済完了の場合、競売を申し立てられた場合は一定期間経過してしまうとマイホームを保有し続けることはできません。該当する方は急いで対策を検討してください。)

 なお、個人再生も自己破産と同じく、特定の債権者だけを特別扱いすることは許されません。

任意整理について

 任意整理とは、弁護士が債務者の代理人として貸金業者等と交渉し、返済額や弁済条件について合意したうえで借金の支払いをしていく手続きです。あまり好ましくはありませんが、自己破産や個人再生の場合と異なり、特定の債権者(例えば、友人・親戚)だけを除外して処理することも可能です。

 借金の解消という観点では、自己破産や個人再生のほうが通常優れています。ただし、任意整理の過程で貸金業者から取り寄せた取引履歴をもとに利息制限法上の利息に引き直し計算して借金がゼロになったり、逆に、貸金業者に払いすぎた利息の返還(過払金)を請求することができる場合もあります。

借金の消滅時効

 借金は弁済期又は最終の返済から一定期間が経過すると消滅時効が成立します。
 ここでは債権の種類ごとに消滅時効期間を整理しておきます。
 (ここで言う債権は貸金に限定し、例えば、卸売業の売掛金や飲食店のツケ払い等といったものを除きます。これらについては民法上、別途短期消滅時効の規定があります。)

 

消費者金融業者が貸主である貸金

 貸主が消費者金融業者である場合、貸金業者が会社なのか個人なのかで時効期間は異なります。
 貸金業者が会社である場合の時効期間は5年、個人である場合の時効期間は10年になります。
 ただし、個人である貸金業者が貸主の場合であっても、商人の営業のための貸金については、商事債権となりますので、時効期間は5年となります。

 

銀行が貸主である貸金

 銀行は会社であり商人ですから、銀行が貸主である貸金の時効期間は5年になります。
 なお、銀行が債権を消滅時効にかからせてしまうことは通常ありません。

 

信用金庫が貸主である貸金

 判例上、信用金庫は、商人ではないとされています。したがって、信用金庫が貸主である貸金の時効期間は10年になります。
 ただし、信用金庫が貸主の場合であっても、商人である会員の営業のための貸金については、商事債権となりますので、時効期間は5年となります。例えば、個人事業主や会社が信用金庫から事業資金を借り入れたのであれば、貸金債権の時効期間は5年です。

 

住宅金融支援機構の住宅ローン

 住宅金融支援機構は商人ではありませんので、住宅金融支援機構の住宅ローンの時効期間は10年になります。

 

判決が確定した場合の時効期間の伸長

 債権者が債務の弁済を求める訴訟を提起したときは、その時点で消滅時効が中断します。いったん時効が成立していた場合にも判決が確定してしまうと、消滅時効の主張が妨げられる結果、消滅時効の効果を享受できません。
 判決が確定した場合、さらに10年が経過しないと消滅時効は成立しません。

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