マルチ商法型投資被害について
例えば、「出資で集めたお金で事業や投資で運用して月○%の運用益を配当する。」「元本保証である。」などとして出資を募る手法があります。このように多数の顧客の出資をもって事業、投資に運用し、運用益を出資者に配当する仕組みのことを集団投資スキームといいますが、集団投資スキームへの出資話のなかで、「新たな出資者の勧誘に成功した場合は、通常の配当に加えて別途紹介手数料がもらえる」という仕組みのもとマルチ商法的に勧誘をして、出資者を増やしていくという被害事例が近時増えています。
出資の対象はまさに多種多様で、株、FX、えびの養殖、スポーツブックメーカーへのアービトラージなどいろいろありますが、実際には投資や事業はほとんど行われておらず、実体のない虚業であるという点は共通しています。
いわゆるアリバイ作りのために、一応、出資した後の一定期間は配当が支払われますが、投資や事業による利益から支払われるのではなく、出資者の出資金がそのまま配当の支払に利用される、ポンジスキームという手法を用いています。当然のことながら必ず破綻します。
超低金利時代の現在において、高利のうまい話はないと思っておいたほうがよいでしょう。
適格機関投資家等特例業務とは
出資の私募または運用を行う場合、原則として、金融商品取引法上の登録が必要となります。
ただし、適格機関投資家1名以上と適格機関投資家以外の一般投資家49名以下を相手方とする集団投資スキームの私募または運用を業として行う場合(適格機関投資家等特例業務)については登録ではなく届出で足ります。
もっとも、これは届出を行った適格機関投資家等特例業務を行う業者について、国がまっとうな業者であることを保証したものではないことに注意が必要です。
適格機関投資家等特例業務の制度は、いわゆるプロ同士の取引において円滑に資金調達を行うことを目的として規定されたものなのですが、現実には悪質業者が金融商品取引法上の規制を潜脱して、アマチュアである一般投資家から出資を募ることに利用され、一般投資家に多大な被害が発生する事例が多く存在していました。(いきなりパンフレットを送りつけてきたり、電話で出資を勧誘する適格機関投資家等特例業者は、まず問題ある業者といっていいです。)
このような問題があったことから、平成27年の金融商品取引法の改正により、適格機関投資家等特例業者がアマチュアである一般人に出資させることはできなくなりました。
ただ、一部悪質業者には新たな動きも見られることから、法改正によって安心するのではなく、新たに被害に遭わないように注意していくことが必要でしょう。