高松総合法律事務所の法律ブログ

高次脳機能障害と自賠責保険の等級認定

2013年4月28日  カテゴリ:交通事故

 高次脳機能障害が自賠責保険において「脳の器質性精神障害」と位置づけられ、1級、2級、3級、5級、7級、9級で評価されることは既に述べたとおりですが、それでは高次脳機能障害は自賠責保険ではどのような判断要素で認定されるのでしょうか。

 この点、高次脳機能障害は、
①意識障害の有無、程度、長さ
②CT,MRIで確認できる脳損傷の画像所見
③行動、認知、情動の障害
の諸要素をもとに総合的に判断されることになります。

 このうち、③がなければそもそも「障害」はないわけで、等級認定はされないことになります。(もっとも、これらの障害は「見落とされやすい障害」であり、本当に障害がないかどうかは慎重に判断する必要があります。)

 ②については、脳挫傷等がCTやMRIで確認できればよいのですが、それらが確認できない場合にも、経時的な画像資料を通して脳室の拡大、脳萎縮等の有無を確認できれば、軸索の損傷を推認することができます。(これらの判断を行うために適切な時期にCT、MRI撮影が行われる必要があります。)
 なお、画像所見について、CTやMRIで上記所見が認められなくても、等級認定のためにはPETやSPECTで異常を立証すればよいと理解できるような記載をしているHP等がありますが、少なくとも現在の自賠責保険の等級認定においては、CT、MRIの画像所見がないにもかかわらず、PET,SPECTのみの所見で等級が認定されることはないでしょう。(私は「このことが妥当である」と言っているわけではなく、「少なくとも自賠責保険の後遺障害等級認定においてはこうだ」と言っているだけです。なお、今後の画像診断技術の向上等によって等級認定のあり方が変わることが全くないとは言い切れないと思います。)
 もし、CT,MRIの画像所見がない場合に、脳損傷の有無を争う場合には裁判所の判断を求める必要があります。CT,MRIの画像所見がなくても高次脳機能障害を認めている裁判例は少数ですが存在します。

 ①については、意識障害の程度等が大きいほど脳損傷の程度も大きいと考えられるわけですが、逆に、意識障害がない場合に必ず脳損傷が否定されるわけではありません。
 裁判例では、意識障害の存在を高次脳機能障害が認定されるための要件としたうえで、脳損傷の存在を否定したものもありますが、全くの誤解としかいいようがないものです。自賠責保険も意識障害を高次脳機能障害認定の要件とはしておらず、「特別に審査する対象案件を選別する条件」としているにすぎません。私が取り扱った案件のなかにも、意識障害が全くないけれども自賠責保険で等級認定されたものは存在します。
 もっとも、意識障害の有無が高次脳機能障害の判断において重要な判断要素であることは間違いないので、その点は注意が必要です。

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