高松総合法律事務所の法律ブログ

弁護士費用補償特約による支払いと源泉徴収

2018年5月16日  カテゴリ:交通事故, ブログ

 交通事故に遭った場合に弁護士へ処理を委任するとき、その費用の全部又は一部を保険金で賄うことができる「弁護士費用補償特約」というものがあります。
 今日ではこの弁護士費用補償特約付きの自動車保険に加入している人も結構います。(ご自身が加入している自動車保険が弁護士費用補償特約付きかどうかは、保険証書を確認するか、または保険会社や代理店に確認してみてください。)

 当事務所でも弁護士費用補償特約による処理が可能で、その場合には①依頼者がいったん弁護士報酬等を支払い、その後、保険会社から弁護士費用補償特約に基づき保険金の支払いを受ける、②依頼者を介さずに弁護士が保険会社から直接弁護士報酬相当分の金銭の支払いを受けるという2つのパターンがあります。
当事務所では①の処理パターンもありますが、特に最近は②の処理パターンがほとんどです。

 その際、少し困惑せざるを得ないことがあります。というのは、保険会社から弁護士報酬がその際、源泉徴収する保険会社と源泉徴収しない保険会社があるのです。(本日現在での処理は、東京海上日動は源泉徴収しておらず、その他の保険会社では源泉徴収をしている(その旨の請求書を作成するよう求められる)と認識しています。)
 いったいどちらの処理が正しいのでしょうか。
 
 所得税法は以下のとおり規定しています。

第六条 第二十八条第一項(給与所得)に規定する給与等の支払をする者その他第四編第一章から第六章まで(源泉徴収)に規定する支払をする者は、この法律により、その支払に係る金額につき源泉徴収をする義務がある。

第二百四条 居住者に対し国内において次に掲げる報酬若しくは料金、契約金又は賞金の支払をする者は、その支払の際、その報酬若しくは料金、契約金又は賞金について所得税を徴収し、その徴収の日の属する月の翌月十日までに、これを国に納付しなければならない。
(略)
二 弁護士(外国法事務弁護士を含む。)、司法書士、土地家屋調査士、公認会計士、税理士、社会保険労務士、弁理士、海事代理士、測量士、建築士、不動産鑑定士、技術士その他これらに類する者で政令で定めるものの業務に関する報酬又は料金

 保険会社が弁護士に直接報酬を支払う場合、保険会社はまさに「報酬・・・の支払をする者」なのだから源泉徴収義務があるとも思えます。
 しかし、よくよく考えてみると、この場合弁護士と保険会社との間に委任契約や雇用契約があるわけではなく、依頼者に対する関係の弁護士報酬等が、便宜上、保険会社から弁護士へ直接支払われるに過ぎず、支払われる金銭の内実は「保険金」に過ぎません。
 そうすると、この場合保険会社には所得税法6条、204条1項2号の適用はなく、源泉徴収を行わない東京海上日動の処理が正しいのではないかと考えられます。

 なお、弁護士費用補償特約による保険金の支払いとは別に、保険会社の顧問弁護士、協力弁護士等の弁護士が保険会社から事案処理の依頼を受け、保険会社から報酬等を受け取る場合があります。この場合は保険会社と弁護士との委任契約に基づき報酬が支払われるわけであり、当然、源泉徴収が必要となります。

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