高松総合法律事務所の法律ブログ

淫行条例違反と慰謝料

2017年6月16日  カテゴリ:ブログ, 男女問題・離婚

 俳優の小出恵介さんについて、「17歳の少女と淫行」「示談が成立」などと各所で激しく報道されているようですが、有名俳優でなくとも、いわゆる淫行条例違反、それに伴う慰謝料請求はしばしば目にする案件です。
 ここでは小出恵介さんのケースを例に、問題となっている淫行条例(正確には「大阪府青少年健全育成条例」)の該当性(刑事上の問題)と慰謝料の問題(民事上の問題)について簡単に検討してみたいと思います。(なお、私は真実を知る立場にありませんので、「報道等を前提とした場合の」検討という形になります。)

 大阪府青少年健全育成条例は次のように規定しています。

第三十四条 何人も、次に掲げる行為を行ってはならない。
一 青少年に金品その他の財産上の利益、役務若しくは職務を供与し、又はこれらを供与する約束で、当該青少年に対し性行為又はわいせつな行為を行うこと(児童買春、児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律(平成十一年法律第五十二号)第二条第二項に該当するものを除く。)。
二 専ら性的欲望を満足させる目的で、青少年を威迫し、欺き、又は困惑させて、当該青少年に対し性行為又はわいせつな行為を行うこと。
三 性行為又はわいせつな行為を行うことの周旋を受け、青少年に対し当該周旋に係る性行為又はわいせつな行為を行うこと。
四 青少年に売春若しくは刑罰法令に触れる行為を行わせる目的又は青少年にこれらの行為を行わせるおそれのある者に引き渡す目的で、当該青少年に対し性行為又はわいせつな行為を行うこと。

 17歳の女性との性行為一般が処罰されるのではなく、上記に列挙される行為が処罰の対象となります。小出さんのケースだと2号が問題になりうるのでしょうが「青少年を威迫し、欺き、又は困惑させ」る行為がなければ条例違反にあたりません。
 実際に小出さんにこれらの行為があったかどうかはよくわかりません。また、男女の関係が良好な間はいいのですが、揉めて別れた場合等に「男性に騙された」等といったといった主張が女性の側からなされることは珍しくありません。小出さんが有名俳優であることも考慮して、女性の言い分の信用性は慎重に評価する必要があると思われます。

 ところで、大阪府青少年健全育成条例は「青少年」を次のように定義しています。

第三条 この条例において、次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定めるところによる。
一 青少年 十八歳未満の者(婚姻により成年に達したものとみなされる者を除く。)をいう。

 一部では相手の女性がシングルマザーであるとの報道もあるようです。もし女性が婚姻している場合、または婚姻していた場合、成人とみなされて、大阪府青少年健全育成条例上の「青少年」に該当しません。(成年擬制。(民法753条)未成年者が結婚していったん成年擬制が生じた場合、その後、離婚してもその効果は覆されません。)
 また、実際には女性に結婚歴がなかったとしても、小出さんが女性から子どもがいるという話を聞いていて「女性が結婚している」又は「女性は結婚していたが離婚した」との認識であった場合、故意がないものとして条例違反の罪は成立しません。

 では、慰謝料の問題についてはどうでしょうか。
 いわゆる淫行条例違反で刑事事件化した場合等、女性との間で示談で金銭的解決を図るということは一般的には珍しくありません。
 これを民事上の権利として構成した場合、女性の精神的損害に係る不法行為に基づく損害賠償請求権(民法709条)ということになるでしょうか。

 ただし、いわゆる淫行条例があいまいな文言による規定であることや、その検挙に関して捜査機関において極めて厳格な適用を行っているとも言い難いことからすると、淫行条例違反で被疑者、被告人となったからといって、必ず不法行為に基づく損害賠償請求が認められるものではないと考えます。
 ケースバイケースとしか言いようがありませんが、男女が好意のもと合意で性交渉に及んだことが認められる場合、17歳である女性との性交渉そのものを不法行為として損害賠償請求をすることは困難であると私は考えます。

 小出さんの件について、大阪府青少年健全条例違反に該当するのかを含め、事実関係はよくわかりません。しかし、いずれにしても示談金として何百万円も支払わなければならないようなケースではないし、示談金額によっては暴利行為として合意自体が公序良俗に反して無効(民法90条)と評価すべき可能性もありうるでしょう。

 あと、付言しておけば、(有名俳優でなくとも)こういった事案で得体の知れない大人の影が背後にちらつくのは、時々あることです。

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